淡路島に移住した、活動とリアル

2022.07.01

淡路島でチャレンジしたい人たちのサポートで多忙な日々を送る、淡路市・地域おこし協力隊の齊藤美結さん。島内外の人と人をつなぎ、おもしろいほうへと傾けるために「大事にしたいこと」を話してくれました。

ワクワクを天秤にかけて、淡路島へ

「毎日いろんな刺激がある一方、スピード感についていくのが大変。でもすぐに海が見られるので、自然に戻れる感覚がいいんですよね」と語る齊藤美結さん。みなさんから親しみを込めて「おみゆさん」と呼ばれています。

おみゆさんは、淡路市の地域おこし協力隊(以下、協力隊)をはじめて約半年。プロジェクト創出のプラットフォーム【淡路ラボ】と、淡路市の移住相談窓口【NPO法人島くらし淡路】を兼務し、島内を駆け回っています。

協力隊になったきっかけは、親友からの勧めだったそうです。

おみゆさん:
大量に仕事をこなすよりも、じっくり向き合った働き方をしたい…そんな思いが湧いていた頃でした。
信頼する人からの『協力隊の募集条件を見た時にあなたが一番に浮かんだよ』との言葉がスッと胸に入ってきたんです

募集条件には「世話好きな人」「人と人とのつなぎ役」といった言葉が並んでいたとか。今回の取材で会話を重ねるほどに「おみゆさんにぴったりやな」と納得感が深まっていきました。

おみゆさんは、移住前の5年半、大阪の広告代理店で営業を経てプランナーを務めていました。どっちの人生もきっと楽しいけれど、協力隊にチャレンジする未来の方が「ワクワクが少し上回った」といいます。

おみゆさん:
誰かの心を動かしたり、行動を引き起こしたり。
広告にはそういう力があります。
企画を考えて文章を編むことが好きなので、代理店の仕事も好きでした。
ただ、協力隊の仕事は、もっと深い原体験レベルで誰かの心を震わせる機会づくりができるような気がしました

事前に淡路ラボや島くらし淡路を見学した際、「チームで取り組むみなさんの熱量に圧倒された」とも。おみゆさんは、ここなら次のステップに行けるかもしれないと感じたそうです。

おみゆさんは、地域に関わる仕事についても語ってくれました。

おみゆさん:
代理店時代に伝統工芸を再興する企画に携わって『なんて地域って面白いんやろ!』と価値観がガラッと変わる経験をしました。
外から地域に入る難しさも痛感したのですが、土地の歴史、技術を紡いできた人や新しい形に変えていく人の姿は、とても魅力的でしたね

地域で人をつなぎ、挑戦を応援する機会を作っていく。そこに関わる人たちの暮らしや気持ちが豊かになっていく。そんなサイクルをつくる側に携わりたいという思いを、協力隊の活動にぶつけることにしたのです。

地域と次世代の可能性を拡げる役割

おみゆさんが所属する淡路ラボは、淡路島で挑戦したい人や事業者と全国の若者をつなげて、未来の可能性を創出するプラットフォームです。2025年の大阪万博開催までの5年間で100件のプロジェクト創出を目指しています。

淡路ラボでのおみゆさんの役割は、若者と事業者のマッチングを図り、プロジェクトの推進をサポートする共創コーディネーターと広報担当です。

「事業者さんの思いを汲み上げて、若者と一緒により伝わる、カタチになる方法を探っています。島外から見ると違った価値や課題など見えてくることがあるんです」とおみゆさんはいいます。

取材に訪れた畑は、発達障がいといわれる児童の運動療育を軸に事業を展開する【NPO法人MUKU】が手がけています。

MUKU FARMという名のこの畑は、多様な人たちが楽しみながら働き、自然に触れられる場としての可能性を探っているそうです。現在は、淡路ラボを通じて島外の学生インターンを迎え、農作業やオンライン配信などの広報活動でプロジェクトを盛り上げています。

今後は、8月頃に淡路市岩屋地区にて農作物の直売マルシェを、2023年にはシェアキッチンをオープンする予定で、淡路島でのチャレンジは拡大中。支援を募るクラウドファンディングでは、初日に第一目標金額に達したほど注目を集めています。

MUKUの副理事の福井宏昌さんは、おみゆさんについてこう語ります。

福井宏昌さん:
今までのものを捨てて新しい役割に挑戦したことは、きっと楽じゃなかったでしょう。
そんな熱意をもっているからこそ、地元の方との関係づくりや新たなつながりなど、人とのご縁が広がっているんだと思います。
そういうおみゆさんを軸にしたコミュニティを頼りにしています

取材当時、淡路ラボのインターン生としてMUKUに参加していた高野夏月さんにもお話を伺うことができました。

高野夏月さん:
おみゆさんとは定期的に面談があり、行き詰まっていることややりたいことなどを相談しています。
視野をサッと広げてくれたり、シフトチェンジするきっかけをくれたり。
頼りになるお姉さんですね

全国の学生がオンライン・オフラインで集う淡路ラボは、「自分とは違うバックグラウンドの人と出会える貴重な機会」とも話していました。おみゆさんは、挑戦する事業者だけでなく、多様な学生たちの支えにもなっているようです。

個に向き合う難しさとやりがい

筆者は以前から、おみゆさんについて「仕事が早い」「何でもできる」といった声を聞いていました。クリエイティブに携わる一人として眩しく思うほど。そんな彼女から「毎日が順風満帆…ではありません!」と意外な言葉が漏れました。

おみゆさん:
淡路ラボで出逢う事業者さんは、挑戦の真っ只中にいる人たち。
学生や社会人も、特別な経験を期待して全国から集まっています。
個の情熱にパワーをもらっていますが、向き合うのもエネルギーが必要で、もうちょっとできることはなかったかなと自分の至らなさを省みることもあります

おみゆさん自身、何も縁のない淡路島に来たチャレンジャー。抱える葛藤は想像以上かもしれません。「悩んだり、悔しかったり…成長痛みたいなものかな」と微笑む姿からは、苦悩よりも心地よい充実感が垣間見えました。

同世代の仲間に救われているというエピソードも話してくれました。

おみゆさん:
最近、毎日のように会う同世代の仲間ができました。
私の弱さや良くないところを見てくれていて、時にフォローもしてくれます。
初めはお互いに遠慮がありましたが、今では彼女がいたから乗り越えられた困難もあったなと感じますね

新天地で頼れる存在ができることは、チャレンジャーとして、移住者として、心強いものです。「もっと支え合う関係になりたいですね」という言葉から、おみゆさんのあたたかさも感じることができました。

協力隊の仕事を通じて、個性あふれる移住者や地元の人たちからも、日々刺激を受けているといいます。

おみゆさん:
淡路島には、島内の知り合い同士でスキルや個性を分け合って循環させる文化があるように感じます。
その一方で、島内だけで完結しない自分も大切にしていたい。
自分の中の多様性のバランスをとっていないと、内輪だけのクローズドな視野になってしまうと思っていて。

きっと淡路島には、島の暮らしだけではなく、二拠点生活のような新しい生き方も受容できる懐の深さがある。
『そばにいる人と分かち合う』という良いところを失わず、いろんな文化が混ざり合って淡路島がアップデートしていけば面白いですね

これは、島民や全国の若者、新たな価値観を持った事業者さんなど、多様な人たちと接しているおみゆさんならではの視点なのかもしれません。イキイキとした島の未来がぼんやり見えているかのように話してくれました。

今も未来も「健やかな日々」を大切に

協力隊で達成したい事と、その後について聞いてみました。

おみゆさん:
正直わかりません!
『大切な人と美味しいご飯を健やかに食べていたいな』とは思いますけどね。
今すぐ何かを成し遂げるというよりも、島の人たちとの関係性や、自分なりに島を味わうことを大切にしたいです。
そして然るべきタイミングで、自分の感性を信じて挑戦をしていきたいですね。
もちろんみなさんへの恩返しの心を持って
おみゆさん:
自由を奪われ、自分を出せないことはすごく不健康だなと思っています。
人がイキイキできる機会や場所、健やかな輪を作っていきたい。
私は『言葉』が好きだから、それを生かしていきたいな

今は力強いビジョンや夢を語る自信がないと語りますが、これが彼女の現在地。「這いつくばりながら、何らかのきっかけを掴めている気がしています」という逞しい言葉も聞くことができました。

「本当に人に支えられています。これは絶対に入れてくださいね」と笑うおみゆさん。
取材を終えて帰路に着く車中でも、関わる人たちへの思いを丁寧に言葉を重ねながら語ってくれました。
奔走する日々の中でも「愛とユーモア」を大切にすることで、おみゆさんのように周りの人の輪が広がっていくのだと感じました。

関連リンク

「齊藤美結さん」Twitter

「淡路ラボ」Twitter

「淡路ラボ」ホームページ

「島暮らし淡路」ホームページ

「mukuマルシェ」Twitter

こちらの記事は、
この方々と一緒につくりました!

「コピー・デザイン・イラストで想いに触れる」淡路島在住
上田志保さん(ライター)

<撮影の感想>
ひとつとして同じエピソードがなくとっても刺激的でした。
みなさんの夢が重なっていくと、
島の未来がもっと楽しくなりそうです!

こちらに掲載している淡路島のマップも上田さんのデザインです。ぜひご覧ください。

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淡路島を拠点に活動する写真家
中田アツシさん(カメラマン)

<撮影の感想>
地元での撮影でしたが、動画と並走する形だったためタイミングを読みながらのとてもスリリングな撮影で、普段以上の達成感を得られました。

記事内の素敵な写真は、すべて中田さんに撮影していただきました。

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